今月のことば「野生司香雪画伯」

インド、ベナレスの北西約十キロにサルナートがある。
お釈迦さまは悟りを開かれた後、苦行時代を共にした五人の修行者がこの地にいることを知り、彼等に最初の説法をされた。
はじめての説法は初転法輪(初めて仏法を転じられた)といい、サルナートは初転法輪の地と言われている。

サルナートには最初に説法をされた場所と言われるダルマ・ラージカストューバ、高さ三十四メートルのダメーク大塔、初転法輪寺(ムーラガンダクティー・ビハーラ)や僧院後があり、州立博物館などもある。

この初転法輪寺に全長約四十四メートル、高さ約四・四メートルの大壁画がある。
八十三年前に日本とインドの民間文化交流として派遣された野生司香雪画伯(のうすこうせつがはく)が描いた「釈尊一代記」である。

仏陀の生涯を、インドの風土や歴史を踏まえ、鮮やかな色彩でわかりやすく描いた日本画の壁画は、訪れる国内外からの観光客や仏教徒らに強い感動を与え続け、今ではアジャンターの壁画と共にサルナートの仏伝として広く知られている世界の文化遺産である。

野生司香雪は香川県高松市生まれの日本画家で東京美術学校卒、日本美術院院友。
大正六~七年、仏教美術研究のため渡印。
現地でアジャンター壁画模写事業に参加。
昭和七年、インドでの仏教再興を志すスリランカ人のダルマパーラが初転法輪寺に釈尊一代記を描こうと日本に依頼。
四十七歳の香雪が選ばれ助手役の河合志宏と渡印。
厳しい自然に阻まれ滞在が長期化し困窮。
インド、スリランカ各地で個展を開き資金を集め、また日本からの義捐金等でしのぎ、足かけ五年がかりで完成させた。

今から四十数年前、初めてインド仏跡巡拝の旅に参加した時は、大壁画の前に立ちながら勉強不足で野生司香雪画伯の事も知らず、素通り?してしまったが、数年後、日本仏教保育協会がインドの菩提樹学園の創立記念大会に参加者を募集していることを知り、参加。
この時は大壁画をじっくり鑑賞し、写真もたくさん撮り帰ってきたことを思い出した。

その大壁画が時と共に劣化、剥落が進み、初転法輪寺では壁画を後世に伝えようと作者の生神を継ぐ日本の手での保全、剥落止めの保存修理をと日本人に呼び掛けている。

先日野生司香雪画伯顕彰会主催のインド菩提会総書認、p・シワリー師の再来讃歓迎会の案内があり、出席してきた。
壁面修復には三期二年、五千万円を予定。
現在第一期で東壁(涅槃側)が完了。
第二・三期は西と南壁(降魔成道と降誕)を今年度修復工事完了の予定だが、資金が約1000万円不足しており、ご協力をお願いしたいとのことであった。

高松市が生んだ偉大な画伯の大壁画の保全募金にご協力をお願いします。
寄付の窓口は(公財)文化財保護・芸術研究助成財団ですが、グループでまとめての振込もできますので詳しいことはお問い合わせください。
なお日印合同落成式法要に参列するインド旅行も企画されております。

詳細はこちら:https://nosu.info/

西光寺では門信徒向けの行事案内、仏典物語等を掲載した寺報「慈光」を発行しております。
寄稿もお待ちしております。発送いたしますので、お申し出ください。